今回は液柱の振動について解説しようと思います。
液柱の振動はばねの振動と同じように扱うことができますが、考え方を知らないと解きずらい問題なのかなと思います。
解き方を知っていれば難なく解ける問題なので、しっかり理解しましょう。
液柱の振動
以下のような液柱を考えます。

大気中に液柱を置きます。
管の中の液面がつり合いの位置(点線)から図のように\(x\)だけ変位させて振動を起こします。
このとき、大気圧を\(P_0\),断面積を\(S\),密度を\(\rho\),液柱の長さを\(h\)としてこの運動を見てみましょう。
開口部が開いている状態
液柱の復元力
まず、この液柱にはつり合いの位置に戻ろうとする復元力がかかります。
どういうことかというと

上の図にあるように、濃い部分の液体の重力によってつり合いの位置に戻ろうとする力が働くということです。
この濃い部分の重力は高さが\(2x\)であることに注意すると
$$
F = 2x\rho Sg
$$
となります。
これによって振動が起こります。
振動周期
この液柱の運動方程式は
$$
\rho S h \frac{d^2x}{dt^2} = -2\rho Sgx
$$
となるので、この振動の周期は
$$
T = 2\pi\sqrt{\frac{h}{2g}}
$$
となります。
片方の開口部を断熱のふたで閉じる場合
意外にすぐ終わってしまったので、別の例を考えてみましょう。

上の図のように片方の開口部を断熱のふたで閉じます。(管も断熱の素材でできているとします。)
このままで振動させると中の空気は断熱圧縮のような状態になり圧力が変化します。
(前の例では常に大気圧と釣り合っていたので圧力変化はしませんでした。)
そのため右と左の開口部間で圧力差が生じます。
今からこの圧力差を求めます。
開口部間の圧力差
断熱変化なのでポアソンの公式
$$
PV^{\gamma} = 一定
$$
が使えます。
ふたを閉じる前と、ふたを閉じ液柱を振動させた後で式を立てます。
振動させる前の空気の体積を\(V\)、振動させた後の圧力を\(P\)とすると
$$
P_0V^{\gamma} = P(V-Sx)^{\gamma}
$$
となります。
よって
\begin{eqnarray}
P &=& P_0\left(\frac{V}{V-Sx} \right)^{\gamma}\\
&=& P_0 \left(1-\frac{Sx}{V}\right)^{-\gamma}\\
&\sim& P_0\left(1 + \gamma \frac{Sx}{V}\right)
\end{eqnarray}
となります。
最後、\(Sx << V\)を使って近似をしました。
よって左右の圧力差によって発生する力の大きさは
$$
S(P-P_0) = P_0 \gamma \frac{S^2}{V}x
$$
となります。
振動周期
最後にこの振動の周期を求めたいと思います。
液柱の運動方程式は圧力差も考慮して
$$
\rho S h \frac{d^2x}{dt^2} = -\left(2\rho Sg – P_0 \gamma \frac{S^2}{V}\right)x
$$
となります。
よって周期は
\begin{eqnarray}
T &=& 2\pi \sqrt{\frac{ \rho h }{ 2\rho g – P_0 \gamma \frac{S}{V} }}\\
&=& 2\pi \sqrt{\frac{ \rho hV }{ 2\rho gV – P_0 \gamma S } }
\end{eqnarray}
となります。
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