【力学】一様な球殻からの万有引力を求めてみた!

物理

今回は「一様な球殻からの万有引力」を求めてみたいと思います。

普通、万有引力といったら太陽や惑星といった「球体」から発生するイメージがあるかもしれません。

しかし、工夫をする(?)ことで球殻からの万有引力も求めることができます。

ちょっとイメージしにくいかと思いますが、頑張っていきましょう。

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球殻からの万有引力

以下のような状況を考えます。

質量\(M\)、面密度\(\sigma\)の球殻の中心\(O\)から、\(z\)離れた点に質量\(m\)の物体があると仮定します。ただし、\(z > a\)

このときに質量\(m\)の物体が受ける万有引力を求めます。

注釈

\(z\)軸上に限定してもいいのかと疑問に思うかもしれません。

これは、球殻は丸い(対称性がある)ので物体がどこにあっても、受ける万有引力は変わらないからです。

なので、一番わかりやすい\(z\)軸上で考えても問題はありません。

また、すべての万有引力は\(z\)成分のみになります。

なぜなら、他の成分(\(x,y\)成分)は\(x>0,x<0\)または\(y>0,y<0\)の部分で打ち消し合ってしまうからです。

この問題ではこのように「対称性」をフルに利用しています。

微小領域を考える

こういう問題の常套手段ですが、微小領域を考えてそれを全領域で積分する、という方法が効果的です。

上の図のように球殻のある一部分を考えます。

このとき、\(OP’ = a,\angle P’OP = \theta,PP’ = r\)と置きます。

微小領域\(\Delta M\)から受ける万有引力\(\Delta F_z\)は

$$
\Delta F_z = -\frac{Gm \Delta M (z – a\cos\theta)}{r^3}
$$

これを全領域で積分すると

\begin{eqnarray}
F_z &=& \int_V -\frac{Gm}{r^3} dM\\
&=& -\int \int\frac{Gm (z – a\cos\theta) }{r^3}\underbrace{\sigma a^2\sin \theta d\theta d\phi }_{dM}\\
&=& -Gm\sigma a^2 \int\int \frac{(z – a\cos\theta)\sin\theta}{r^3}d\theta d\phi\tag{1}
\end{eqnarray}

ここで、余弦定理

$$
r^2 = a^2 + z^2 -2az\cos\theta\tag{2}
$$

より、

$$
rdr = az\sin\theta d\theta\tag{3}
$$

(2)(3)式を(1)式に代入すると

\begin{eqnarray}
F_z &=& -Gm\sigma a^2 \int\int \frac{(z – a\cos\theta)}{azr^2}dr d\phi\ \\
&=& -Gm\sigma a^2 \int\int \frac{(z + \frac{r^2 – a^2-z^2}{2z})}{azr^2}dr d\phi\ \\
&=& -\frac{Gm\sigma a}{z^2}\int\int \frac{1}{2}\left(1+\frac{z^2 – a^2}{r^2}\right)dr d\phi
\end{eqnarray}

となります。

今、

\begin{cases}
z-a < r < z +a\\
0 < \phi < 2\pi
\end{cases}

の範囲で積分すると

\begin{eqnarray}
F_z &=& -\frac{Gm\sigma a \pi}{z^2}\int 1+\frac{z^2 – a^2}{r^2}dr \\
&=& -\frac{Gm\sigma a \pi}{z^2} \underbrace{\left\{z+a – z + a -(z^2-a^2)\left(\frac{1}{z+a} – \frac{1}{z-a}\right)\right\}}_{4a}\\
&=& -\frac{Gm 4\pi a^2 \sigma }{z^2} \\
&=& – \frac{GmM}{z^2}
\end{eqnarray}

となります。

ここから、球殻の中心(重心)にすべての質量が集まったとしたときに生まれる万有引力と同じことが分かります。

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