こんにちは
今回は「s偏光・p偏光の反射係数」について解説したいと思います。
s偏光とは「入射面に対して垂直な偏光」でp偏光とは「入射面に対して平行な偏光」のことを指します。
さらに今回は、それぞれの偏光について解説した後に
s偏光の反射係数
$$
r_s = \frac{\sin(\beta – \alpha)}{\sin(\beta + \alpha)}
$$
p偏光の反射係数
$$
r_p = \frac{\tan(\alpha – \beta)}{\tan(\alpha + \beta)}
$$
を最終的に求めて行きたいと思います。
s偏光・p偏光の反射係数
この記事は
- 入射面について
- s偏光とは
- s偏光の反射係数
- p偏光とは
- p偏光の反射係数
- ブリュースター角
という順番で解説していきたいと思います。
入射面について
ではs偏光・p偏光について解説する前にそれらを定義するうえで欠かせない「入射面」について解説していきます。

↑のような反射を考えたとき、
入射面は「境界(空気と水の境界)の面に垂直な面」にあたります。
つまり、今あなたが見ているパソコン(またはスマホ?)の画面(に平行な面)が入射面にあたります。
または「電磁波の進行方向のベクトルと境界の法線ベクトルを含む面」とも言えます。
s偏光とは
この入射面に電場(または磁場)が垂直な場合、この電磁波は「s偏光」となります。
図で書くと

電場が入射面に垂直に波打っているイメージです。
s偏光の反射係数
↓のような電磁波の反射を考えます。

$$
\begin{eqnarray}
入射電場:E\\
入射磁場:H\\
反射電場:E”\\
反射磁場:H”\\
透過電場:E’\\
透過磁場:H’\\
入射角・反射角:\alpha\\
屈折角:\beta\\
\end{eqnarray}
$$
とします。また電場と磁場は互いに垂直です。
ここから、「境界条件・電場と磁場の関係・スネルの法則」から反射係数を求めます。
境界条件
それではs偏光の反射係数を求めて行きましょう。これは電磁波の境界条件から求めることができます。
境界を含む電場の周回積分は0
$$
\oint {\bf E} \cdot d{\bf r} = 0
$$
を使っていきます。
(「電磁気】2つの異なる誘電体における境界条件を求めてみた!」を参考にしてください。)
実際の計算
先ほどとは見方を変えて、電磁波の向かってくる方向から電場を見ます。
電場の水平成分を↓のような閉曲線で線積分すると

$$
\begin{eqnarray}
\oint {\bf E}\cdot d{\bf r} &=& 0\\
E+E” – E’ &=& 0
\end{eqnarray}
$$
となります。
磁場についての境界条件
磁場についても同じような関係
$$
\oint {\bf H} \cdot d{\bf r} = 0
$$
が成り立つのでこれを使っていきます。

$$
\begin{eqnarray}
\oint {\bf H} \cdot d{\bf r} &=& 0\\
H\cos\alpha – H”\cos\alpha – H’\cos\beta &=& 0
\end{eqnarray}
$$
となります。
電場と磁場の間に成り立つ式
マクスウェル方程式から電場と磁場の間に
$$
\begin{cases}
H = \sqrt{\frac{\epsilon_0}{\mu_0}} E\\
H” = \sqrt{\frac{\epsilon_0}{\mu_0}} E”\\
H’ = \sqrt{\frac{\epsilon_1}{\mu_1}} E’\\
\end{cases}
$$
という式が成り立ちます。ただし、
$$
\begin{cases}
\epsilon_0・\mu_0 : 真空の誘電率と透磁率\\
\epsilon_1・\mu_1 : 水中の誘電率と透磁率
\end{cases}
$$
で、\(\mu_0 \simeq \mu_1\)が成り立ちます。
スネルの法則
さらにここからスネルの法則を使います。導出はここではしませんが「【電磁気】スネルの法則を導出してみた!」を参考にしてください。
スネルの法則より
$$
\frac{c}{v} = \frac{\sqrt{\epsilon_1\mu_1}}{\sqrt{\epsilon_0\mu_0}}\simeq \sqrt{\frac{\epsilon_1}{\epsilon_0}}
$$
また、同じくスネルの法則より
$$
\frac{c}{v} = \frac{\sin\alpha}{\sin\beta}
$$
となり、これら二式から
$$
\sqrt{\frac{\epsilon_1}{\epsilon_0}} = \frac{\sin\alpha}{\sin\beta}
$$
となります。
計算
これらの式と今まで求めた式
$$
\begin{cases}
E+E” – E’ = 0\\
H\cos\alpha – H”\cos\alpha – H’\cos\beta = 0
\end{cases}
$$
$$
\begin{cases}
H = \sqrt{\frac{\epsilon_0}{\mu_0}} E\\
H” = \sqrt{\frac{\epsilon_0}{\mu_0}} E”\\
H’ = \sqrt{\frac{\epsilon_1}{\mu_1}} E’\\
\end{cases}
$$
$$
\sqrt{\frac{\epsilon_1}{\epsilon_0}} = \frac{\sin\alpha}{\sin\beta}
$$
を考慮して\(E’,H’\)を消すと
$$
\frac{E”}{E} = \frac{\sin(\beta – \alpha)}{\sin(\beta + \alpha)}
$$
となり、s偏光の反射係数\(r_s = \frac{E”}{E}\)を求めることができました!!
p偏光とは
それでは次に、p偏光について解説します。
入射面に電場(または磁場)が水平な場合、この電磁波は「p偏光」となります。
図で書くと

電場が入射面に水平にに波打っているイメージです。
p偏光の反射係数
↓のような電磁波の反射を考えます。

$$
\begin{eqnarray}
入射電場:E\\
入射磁場:H\\
反射電場:E”\\
反射磁場:H”\\
透過電場:E’\\
透過磁場:H’\\
入射角・反射角:\alpha\\
屈折角:\beta\\
\end{eqnarray}
$$
とします。s偏光と電場と磁場の方向が逆になっています。
s偏光と同じように計算
s偏光と同様に「境界条件・電場と磁場の関係・スネルの法則」を用いて計算を進めると
$$
\begin{cases}
E\cos\alpha – E”\cos\alpha – E’\cos\beta = 0\\
H+ H” – H’= 0
\end{cases}
$$
$$
\begin{cases}
H = \sqrt{\frac{\epsilon_0}{\mu_0}} E\\
H” = \sqrt{\frac{\epsilon_0}{\mu_0}} E”\\
H’ = \sqrt{\frac{\epsilon_1}{\mu_1}} E’\\
\end{cases}
$$
$$
\sqrt{\frac{\epsilon_1}{\epsilon_0}} = \frac{\sin\alpha}{\sin\beta}
$$
を考慮して\(E’,H’\)を消すと
$$
\begin{eqnarray}
\frac{E”}{E} &=& \frac{\cos\alpha\sin\alpha-\sin\beta\cos\beta}{\cos\alpha\sin\alpha + \sin\beta\cos\beta}\\
&=& \frac{\sin(\alpha – \beta)\cos(\alpha+\beta)}{\sin(\alpha + \beta)\cos(\alpha-\beta)}\\
&=& \frac{\tan(\alpha – \beta)}{\tan(\alpha + \beta)}
\end{eqnarray}
$$
となり、p偏光の反射係数\(r_p = \frac{E”}{E}\)を求めることができました!!(途中で和→積の公式を使いました。)
ブリュースター角
では最後に「ブリュースター角」について解説します。
ブリュースター角とはp偏光の反射率が0になる角度のことで
$$
\alpha + \beta = \frac{\pi}{2}
$$
となる角度のことです。
この角度になるとp偏光の反射係数は
$$
r_p = \frac{\tan(\alpha – \beta)}{\tan(\alpha + \beta)}
$$
の分母が発散(\(\tan\frac{\pi}{2} \to \infty\))するので結局\(r_p \to 0\)となるのです。
p偏光に特異な性質なのでぜひ覚えておきましょう。
参考
今回はこちらの本を参考させていただきました!!