今回は電荷\(Q\)が帯電した導体球を回転させたときに中心軸に発生する磁束密度を求めていきたいと思います。
回転している導体球のつくる磁束密度
ビオサバールの法則
ビオ・サバールの法則
$$
{\bf B} = \frac{\mu_0}{4\pi}\int \frac{Id{\bf r’}\times({\bf r-r’})}{|{\bf r-r’}|^3}
$$
を使って問題を解いていきます。
下準備
ではビオサバールの法則で使う諸々の変数を決めていきます。
問題設定としては半径\(R\)で電荷\(Q\)を帯びた導体球を角速度\(\omega\)で回転させる場合を考えています。
微小部分に流れる電流\(I\)
まず、この導体球に流れている電流を考えていきます。
今、電荷\(Q\)を帯びた導体球が回転しています。

今回は球を考えているので極座標を使います。
ここで、電荷と電流の関係式
$$
I=\frac{dQ}{dt}
$$
を思い出すと
$$
\begin{eqnarray}
Idt &=& dQ\\
&=& \sigma R^2\sin\theta d\theta d\phi
\end{eqnarray}
$$
これによって以上の図の黄色い微小部分に流れる電流\(I\)は
\begin{eqnarray}
I &=& \sigma R\underbrace{\frac{d\phi}{dt}}_{\omega} R\sin\theta d\theta\\
&=& \frac{\omega Q}{4\pi}\sin\theta d\theta
\end{eqnarray}
と書けます。
ただし、\(\sigma=\frac{Q}{4\pi R^2}\)は面電荷密度を表しています。
よって、全体の電流\(I\)はこれを\(\theta,\phi\)の全領域で積分したものになります。(あとで行います。)
磁束密度の座標\({\bf r}\)
次に、\({\bf r}\)ですが、これは磁束密度が発生している場所を指しています。
なので
$$
{\bf r} = \begin{pmatrix} 0\\ 0\\ R\cos\theta \end{pmatrix}
$$
となります。
電流が流れている座標 \({\bf r’}\)
つぎに\({\bf r’}\)ですが、これは電流\(I\)が流れている座標を示しています。
よって
$$
{\bf r’} = \begin{pmatrix} R\sin\theta\cos\phi \\ R\sin\theta\sin\phi \\ R\cos\phi\end{pmatrix}
$$
となります。
また、これを\(\phi\)で微分すると
$$
d{\bf r’} = \begin{pmatrix} -R\sin\theta\sin\phi d\phi\\ R\sin\theta\cos\phi d\phi \\ 0\end{pmatrix}
$$
となります。
\({\bf r-r’}\)を求める
以上から\({\bf r-r’}\)を求めると
$$
{\bf r-r’} = \begin{pmatrix} -R\sin\theta\cos\phi \\ -R\sin\theta\sin\phi \\ R\cos\theta \end{pmatrix}
$$
となります。
なので
$$
|{\bf r-r’}|^3 = R^3
$$
もわかります。
\(d{\bf r’}\times({\bf r-r’})\)を求める
さらに\(d{\bf r’}\times({\bf r-r’})\)(ビオサバールの法則の積分の分子部分)も求めます。
すると
$$
d{\bf r’}\times({\bf r-r’}) = \begin{pmatrix} R^2\sin^2\theta \cos\theta \sin\phi d\phi \\
-R^2\sin^2\theta\cos\theta\sin\phi d\phi\\
R^2\sin^3\theta d\phi
\end{pmatrix}\tag{1}
$$
となります。
では下準備が終わったので最後の計算に取り掛かりましょう。
ビオサバールの法則に代入していく
ビオサバールの法則に代入していきます。
ただし、\(\phi\)を\(0\to 2\pi\)の範囲で積分することに注意します。
すると、(1)式からもわかるように\(x,y\)成分は0になります。
よって
\begin{eqnarray}
B_z &=& \left[\frac{\mu_0}{4\pi}\int \frac{Id{\bf r’}\times({\bf r-r’})}{|{\bf r-r’}|^3}\right]_{z} \\
&=& \frac{\mu_0}{4\pi} \int_{0}^{\pi}d\theta \int_{0}^{2\pi}d\phi \frac{\omega Q}{4\pi R^3}R^2\sin^3\theta \\
&=& \frac{\omega Q}{6\pi R}
\end{eqnarray}
と求まりました。
よって、電荷量\(Q\)を帯びた導体球が回転することによって中心軸上に強さ\( \frac{\omega Q}{6\pi R} \)の磁束密度が発生することが分かりました。
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