今回は円筒の中を転がる球体の運動について解説したいと思います。
「【力学】半円面上を転がる球の運動を求めてみた!」で球面の上を転がる球の運動を求めましたが、今回は球面の内側を球が転がっていく場合を考えていきます。
円筒の中を転がる球体の運動
以下のような状況を考えます。

半径\(a\)の円筒の内側を半径\(b\)、重さ\(m\)の球が転がっています。
いま、\(\theta_0\)の位置から静かに手を離したとして、円筒と球の間に生じる摩擦力\(f\)、球の位置が\(\theta\)のときの運動を求めます。
運動方程式を立てる
では重心の運動方程式を立ててみます。
重心にすべての質量が集まっていると考えると、長さ\(a-b\)の振り子と同じと考えられます。
よって\(\theta\)方向の運動方程式は
\begin{eqnarray}
m(a-b)\ddot \theta = -mg\sin\theta + f\tag{1}
\end{eqnarray}
となります。
回転の運動方程式を立てる
次に回転の運動方程式を立てます。
球体が\(\phi\)だけ回転しているとき、
$$
I\ddot \phi = -fb\tag{2}
$$
となります。
ただし、
$$
I = \frac{2}{5}mb^2
$$
であり、重心まわりの慣性モーメントを表しています。
球体の速度についての関係式
(1),(2)だけではまだ不十分(未知の値が\(\theta,\phi,f\))なので、もう一つ式が必要です。
すなわちそれは球体の速度についての関係式です。
つまり、重心における円運動の速さと重心まわりの回転速度は同じである、という関係です。
式で書くと
$$
\underbrace{(a-b)\dot \theta}_{ 円運動の速さ } = \underbrace{b\dot\phi}_{ 重心まわりの回転速度 } \tag{3}
$$
となります。
これで関係式はすべて求まったので計算をしていきましょう。
計算
(1)~(3)式をそれぞれ代入する。
まず、摩擦力\(f\)をもとめる。
(1)式から
\begin{eqnarray}
\ddot \theta = -\frac{g}{a-b}\sin\theta + \frac{f}{m(a-b)}\tag{4}
\end{eqnarray}
となる。
(2),(3)式から
\begin{eqnarray}
f &=& -\frac{I}{b}\ddot\phi\\
&=& -\frac{2}{5}m(a-b)\ddot\theta\\
&=& \frac{2}{5}(mg\sin\theta – f)\tag{5}\\
\end{eqnarray}
となります。
よって\(f\)は
\begin{eqnarray}
f = \frac{2}{7}mg\sin\theta\tag{6}
\end{eqnarray}
となる。
また、この球の運動の周期は
(4)式に(6)式を代入して
\begin{eqnarray}
(a-b)\ddot \theta &=& -g\sin\theta + \frac{2}{7}g\sin\theta\\
&=& -\frac{5}{7} g\sin\theta
\end{eqnarray}
となります。
\(\theta << 1\)のとき、\(\sin\theta \sim \theta\)が成り立ちます。
よって周期は
$$
T = 2\pi \sqrt{\frac{7(a-b)}{5g}}
$$
となります。
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