今回は剛体の滑車について解説したいと思います。
滑車の問題は高校などでもやることかと思いますが、それらの問題は大抵、滑車の重さを0と近似していたと思います。
そのため、滑車に掛かる張力が等しかったのですが、今回は剛体の滑車を考えるので、その性質を使うことができません。
何はともあれ、やってみるのが一番早いので、実際にやっていきましょう。
剛体滑車の運動
下準備
以下のような

半径\(a\)で、重心まわりの慣性モーメントが\(I\)の滑車に糸をかけ、両端に質量\(m_1,m_2\)の重りをかけた場合を考えます。
運動方程式
糸の両端に掛かっている重りに関する運動方程式は
\begin{eqnarray}
\begin{cases}
m_1 \ddot x = m_1g – T_1\\
m_2 \ddot x = T_2 – m_2g
\end{cases} \tag{1}
\end{eqnarray}
となります。
ここで、おもりの加速度が等しくなるという滑車の性質を使いました。
高校の物理では各々のおもりに掛かる張力\(T_1,T_2\)は等しくなっていたかもしれませんが、今回の場合、滑車に重さがあり、その回転によってこれらの張力に違いが出てきます。
それを表すのが次の回転の方程式です。
回転の方程式
滑車に対する回転の方程式を立てます。
滑車の回転した角度を\(\theta\)とすると
$$
I\ddot\theta = a(T_1-T_2)\tag{2}
$$
となります。
繰り返しになりますが、これを見るとわかるように\(I = 0\)の場合は\(T_1 = T_2\)となり、張力が等しくなることが分かります。
これは高校の物理の結果と一致しています。
滑らない条件
滑車と糸が滑らない条件
$$
x = a\theta
$$
を使います。これを時間で微分すると
$$
\ddot x = a\ddot \theta\tag{3}
$$
となります。
これで準備が整いました。あとはこれらを代入するだけです。
計算
(1)~(3)を使って\(\ddot x,T_1,T_2\)を求めると
\begin{eqnarray}
\begin{cases}
\ddot x = \frac{a^2(m_1-m_2)}{I+a^2(m_1+m_2)}g\\
T_1 = \frac{I+2a^2m_2}{I+a^2(m_1+m_2)}m_1g\\
T_2 = \frac{I+2a^2m_1}{I+a^2(m_1+m_2)}m_2g
\end{cases}
\end{eqnarray}
となります。
余談
この器械は「アドウッドの器械」と呼ばれています。
両端の重りには同じ加速度が与えられるため、\(m_1\)と\(m_2\)の差を小さくすることによって、正確な重力加速度が導びかれます。
アドウッドはこの装置を使い、 重力加速度の正確な値を求めたそうです。
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