今回は球対称の静電ポテンシャルを求めていきたいと思います。
球対称のポテンシャルというのは、球の中心からの距離\(r\)のみに依存するポテンシャルのことです。
このような場合を考えたときに、ポアソン方程式を解いてポテンシャルを求めていきます。
ポアソン方程式を解く
まず、ラプラス方程式の一般解を求めます。
三次元極座標のラプラス方程式
ラプラス方程式は
$$
\nabla^2\phi(r) = 0
$$
と書かれます。
今は球体を考えているので\(\nabla^2\)を三次元極座標に変換します。
すると、ラプラス方程式は
$$
\nabla^2\phi(r) = \frac{1}{r^2}\frac{d}{dr}\left(r^2\frac{d\phi}{dr}\right)=0\tag{1}
$$
と変形できます。
(\(\phi = \phi(r)\)は球対称なので角度方向には依存せず、(1)式のように\(r\)に関係するところだけ残る。)
まずはこの一般解を求めていきましょう。
一般解
(1)式より、両辺を\(r\)で積分すると
$$
r^2\frac{d\phi}{dr} = C_{0} (C_{0}は定数)
$$
となります。
もう一度\(r\)で積分すると
$$
\phi = -\frac{C_{0}}{r}+C_1 (C_{1}は定数)\tag{2}
$$
となります。これが一般解です。
次に境界条件からポアソン方程式を解いて定数を決めていきます。
境界条件
境界条件として
「原点を中心とする半径\(R\)の球内に電荷\(Q\)が全体に一様に分布している」
ということを課します。
なので、電荷密度\(\rho\)は
$$
\rho = \begin{cases}\frac{3Q}{4\pi R^3} (球の内部:r<R)\\0 (球の外:r>R)\end{cases}\tag{3}
$$
となります。
ポアソン方程式
ではポアソン方程式を解いていきましょう。
ポアソン方程式は
$$
\nabla^2 \phi = -\frac{\rho}{\epsilon_{0}}\tag{4}
$$
と書かれます。
(4)式に(3)式を代入します。
\(\rho = 0\)のとき
\(\rho = 0\)のとき、つまり球の外\((r>R)\)で、(4)式は
$$
\nabla^2 \phi = 0
$$
となり、ラプラス方程式に一致します。よって一般解は
$$
\phi = -\frac{C_0}{r}+C_1\tag{5}
$$
でした。
\(\rho = \frac{3Q}{4\pi R^3}\)のとき
\(\rho = \frac{3Q}{4\pi R^3}\)のとき、つまり球の内部\((0<r<R)\)で(4)式は
$$
\frac{1}{r^2}\frac{d}{dr}\left(r^2\frac{d\phi}{dr}\right)=- \frac{3Q}{4\pi \epsilon_0 R^3}\tag{6}
$$
となります。先ほどと同様に(6)式も2回\(r\)で積分すると
$$
\phi = -\frac{Q}{8\pi\epsilon_0R^3}r^3 – \frac{C_2}{r} + C_3\tag{7} (C_2,C_3は定数)
$$
となります。
無限遠・\(r=0\)でのポテンシャル
無限遠
では境界条件を考える前に、無限遠と\(r=0\)でのポテンシャルを考えます。
まず、無限遠ではポテンシャル\(\phi\)が0とします。
このとき\(r>R\)なので、(5)式から、
$$
\phi = 0+C_1 = 0
$$
なので、\(C_1=0\)となります。
\(r=0\)
\(r=0\)のとき、ポテンシャル\(\phi\)が発散しないためには
このとき\(r<R\)なので、 (7)式から
$$
\phi = 0 – \frac{C_2}{0} + C_3
$$
より、
$$
C_2 = 0
$$
ならば\(\phi\)が発散しないことが分かります。
境界条件を考える
球の境界では
- ポテンシャル\(\phi\)は等しい
- \(r\)微分が等しい
という条件があるので、\(C_1=0,C_2=0\)を考慮して
$$
\begin{cases}
\frac{Q}{8\pi\epsilon_0R}+C_3 = -\frac{C_0}{R} (1の条件)\\
-\frac{Q}{4\pi\epsilon_0R^2}=\frac{C_0}{R^2} (2の条件)
\end{cases}
$$
となります。
これを解くと
$$
\begin{cases}
C_0 = -\frac{Q}{4\pi\epsilon_0}\\
C_3 = \frac{3Q}{8\pi\epsilon_0R}
\end{cases}
$$
となります。
これから、ポテンシャル\(\phi\)は
$$
\phi = \begin{cases}-\frac{Q}{8\pi\epsilon_0R^3}r^2+\frac{3Q}{8\pi\epsilon_0R} (0<r<R)\\ \frac{Q}{4\pi\epsilon_0r}(R<r)\end{cases}
$$
と求めることができました。