今回は「初速度によって変わる振り子の運動」についてまとめたいと思います。
振り子に初速度を与えると、その初速度によって運動が変わってきます。
なんとなく想像は付きますが、具体的にどんな速度を与えればよいか調べていきましょう。
初速度によって変わる振り子の運動
長さ\(l\)、重さ\(m\)の振り子に最下点で初速度\(v_0\)を与えたときの運動を調べてみましょう。

考えられる運動
考えられる運動は3つあります。(分け方次第ではもっとあるかもしれませんが)
- 中心点以下の高さで運動
- 中心点以上で運動し、その後糸がたるんで放物運動
- 全円回転
です。
一つずつ見てきましょう。
中心点以下で運動
まず、中心点以下の運動を見ていきます。
これはエネルギー保存を考えていきます。
中心点と同じ高さで運動エネルギーが0になればよいので
$$
\frac{1}{2}mv_0^2 = mgl
$$
となります。
これを解くと
$$
v_0 = \sqrt{2gl}
$$
となります。
初速度\(v_0\)がこれより遅ければ、中心点の高さまで振り子が運動することはありません。
よって、中心点以下で運動するときの条件は
$$
v_0 < \sqrt{2gl}\tag{1}
$$
となります。
中心点以上で運動し、その後糸がたるんで放物運動
つぎに、中心点以下で運動してそのあと糸がたるんでしまう条件を調べます。
そのためにまず、最高点で張力\(T\)が0になってしまう条件を考えます。
エネルギー保存より、最高点の速さを\(v\)とすると
$$
\frac{1}{2}m v^2 + mg(2l) = \frac{1}{2}mv_0^2
$$
よって最高点での速さは
$$
v_0 = \sqrt{v^2 + 4gl}\tag{2}
$$
となります。
さて、糸がたるむということは張力\(T\)が0になってしまうということなので、運動方程式
$$
m\frac{v^2}{l} = -\underbrace{T}_{0} + mg
$$
より、
$$
v = \sqrt{gl}\tag{3}
$$
となります。
よって、(2)(3)式から最高点で張力が0になってしまう\(v_0\)の値は
$$
v_0 = \sqrt{5gl}\tag{4}
$$
となります。
\(v_0\)がこの値より遅ければ全円回転することはなく、途中で糸がたるんで放物運動します。
よって中心点より上で振動かつ、途中で糸がたるむためには
(1),(4)式より、
$$
\sqrt{2gl} < v_0 < \sqrt{5gl}\tag{5}
$$
となります。
全円回転
全円回転するには最高点で糸がたるまなければよいので
$$
v_0 > \sqrt{5gl}\tag{6}
$$
となります。
このような感じで振り子の運動は決められていることが分かりました。