こんにちは
今回は「連続体近似と平均自由行程」について解説したいと思います。
連続体近似と平均自由行程
連続体近似とは物体を「連続体」として扱う近似のことです(そのまんまですね)。
平均自由行程とは
$$
l \sim \frac{1}{π\sigma^2 n}
$$
と書け、粒子が他の粒子とぶつからずに進むことのできる距離(の平均)を表しています。
これらがどのようなものなのか、またどのように関係するのかを詳しくみていきましょう。
連続体近似
連続体近似を説明する前に連続体について解説するというのが筋というものでしょう。
連続体とは、一言で言えば「物を大雑把に見よう」ということだと思います。
つまり、微視的(ミクロ)な視点ではなく、巨視的(マクロ)な視点でみて色々な物理量を計測しましょう!ということです。
例えば川の流れなどはその一つで、川の流れの速さを測定するときに、水分子一つ一つの動きを考えて速度を計算しないと思います。
「川の流れ」というある意味巨視的で連続的な物体を考え、その物理量(速度、温度、密度などなど)を考えます。
このような、水分子一つ一つの動きを「川の流れ」として大雑把に考えることを「連続体近似」と言います。
連続体近似の条件
連続体近似は分かりましたが、ではそのような近似をいつでもやっていいか?と言われるとそうではないです。
これには条件があり、具体的には
$$
l << L (l : 平均自由行程, L : 現象の典型的なスケール)
$$
が成り立つときに限ります。
平均自由行程は先ほど説明した通り、他の粒子とぶつからずに進むことのできる(平均的な)距離のことです。
また現象の典型的なスケールとは、例えば星間物質などは1pcが典型的なスケールになります。典型的にどれくらいの大きさか、どれくらい広がっているか、と考えておけば良さそうです。
平均自由行程の式
では、最後に平均自由行程がなぜあのような式で表せるのかを導出して終わりたいと思います。
まず、以下のような粒子が入った円柱を考えます。

底面積は1で長さは\(l\)です。またこの粒子の直径は\(\sigma\)で、数密度(単位体積あたりに何個あるか)は\(n\)とします。
さて、この円柱の中に入っていく粒子(黄色)は他の粒子とぶつからずにどこまで進むことができるでしょうか?

黄色い粒子が入射してくる方からこの円柱を見ると上の図ように見えると思います。
「黄色い粒子が他の粒子とぶつかる」とは上の図のように\(π\sigma^2\)の領域(仮に「衝突領域」とでもしましょう)に入ってしまった場合を指します。
円柱が長くなるほど(\(l\)が増えるほど)粒子が増え、黄色い粒子から見た「衝突領域」は増えていきます。
なので、(大雑把に)どんどん長さ\(l\)を増やせば、黄色い粒子の突入する単位面積は「衝突領域」で満たされてしまいます。
この、単位面積が「衝突領域」で満たされる円柱の長さが「平均自由行程」になります。
これを式に直すと
$$
1 \sim π\sigma^2nl
$$
となります。これを平均自由行程\(l\)について解くと
$$
l \sim \frac{1}{π\sigma^2n}
$$
となり、最初に見た式と一致します!