今回は光子気体の圧力と内部エネルギー密度との関係を求めていきたいと思います。
方法としては光子を分子に見立てて、分子運動論的に圧力を求めていきます。
問題設定
1辺の長さが\(L\),体積\(V\) の立方体の容器の中に,光子が\(N\)個入っており容器の各辺に合わせて \(x軸, y軸,z軸\)をとり,\(x軸\)に垂直な壁を\(W\)とする.
解法
力積
まず、光子が壁\(W\)にあたって完全反射したときの壁に与える力積\(I_x\)を考えます。
運動量

上の図から、光子の運動量の方向と速度の方向が同じなので、 $$ \cos\theta = \frac{c_x}{c} $$ となります。
よって、光子の運動量の\(x\)成分は、\(p = \frac{h}{\lambda}\)より、 $$ \begin{eqnarray} p_x &=& p\cos\theta\\ &=& \frac{h c_x}{\lambda c}\;\;\;\left(\lambdaは波長,cは光子の速さ\right) \end{eqnarray} $$ となります。
壁にぶつかる回数
光子は\(2L\)動くごとに壁と衝突します。
また、\(\Delta t\)秒間には\(c_x\Delta t\)の距離動くのでその間の衝突回数\(n\)は
$$ n = \frac{c_x\Delta t}{2L} $$ となります。
力積と力
一回の衝突で壁が受ける力積は光子の運動量の変化に等しいので $$ \begin{eqnarray} p_x-(-p_x) &=& 2p_x\\ &=& 2\frac{h c_x}{\lambda c} \end{eqnarray} $$ となります。
光子はN個存在し、n回衝突するので、 $$ \begin{eqnarray} I_x = 2\frac{h c_x}{\lambda c}\times N \times n &=& 2\frac{h c_x}{\lambda c}N\frac{c_x\Delta t}{2L}\\ &=& \frac{Nh c_x^2}{L\lambda c}\Delta t \end{eqnarray} $$
ぶつかったときの力\(F\)は $$ I_x = F\Delta t $$ の関係があるので、
$$ F = \frac{I_x}{\Delta t} = \frac{Nh c_x^2}{L\lambda c}\tag{1} $$ となります。
平均速度
色々な光子について平均を取ると、
$$ c^2 = c_x^2 + c_y^2 +c_z^2 $$ であり、
\(x,\;y,\;z\)どの方向でも光子の運動は同等なので $$ c^2 = 3c_x^2 $$ つまり、 $$ c_x^2 = \frac{1}{3}c^2\tag{2} $$ となります。
(2)式を(1)式に代入すると、 $$ F = \frac{Nh c^2}{3L\lambda c} = \frac{Nh c}{3L\lambda} $$ となります。
圧力
壁にかかる圧力\(P\)は
$$ P =\frac{F}{L^2} $$ と表されるので、立方体の体積を\(V\)とすると、
$$ P = \frac{Nh c}{3L^3\lambda} = \frac{Nh c}{3V\lambda} $$ となります。
内部エネルギー密度との関係
内部エネルギー\(U\)は粒子一個のエネルギーが\(\frac{hc}{\lambda}\)なので $$ U = N\frac{hc}{\lambda} $$ と表せます。
よって、内部エネルギー密度\(u\)は $$ u = \frac{U}{V} = N\frac{hc}{V\lambda} $$ となり、圧力\(P\)との関係は
$$ P = \frac{1}{3}u $$ と表すことができます。