こんにちは
今回は磁気流体における「デバイ長」について解説したいと思います。
デバイ長の値は
$$
\lambda_D = \sqrt{\frac{k_B T}{4\pi n e^2}}
$$
となっています。今回はこれを導いていきましょう。
デバイ長
一般にミクロな世界では重力よりも電磁気力の方が強いです。しかし、宇宙といったマクロなスケールでは、重力が非常に強い相互作用を及ぼしています。
では、この電磁気力の影響の及ぶ範囲はどれほどなのでしょうか。これを表すのがデバイ長になります。
プラズマ中の荷電粒子に生じる電場とポテンシャル
では、宇宙に存在する高温プラズマ中の荷電粒子を例に考えていきましょう。
このプラズマが電荷密度\(Q=ne(nは荷電粒子の数密度、eは素電荷)\)で一様に分布しているとします。
そして、このプラズマ中、距離\(l\)のところに存在する荷電粒子を考えます。
このときの電場の強さを求めます。
下のような図形を考えてガウスの法則を適用すると

底面積方向の電場は底面積が1なことを考慮すると
$$
E・1 = \frac{Ql}{\epsilon_0}
$$
となります。
よって、CGS単位系を使うと\(\epsilon_0=\frac{1}{4\pi}\)より電場の強さは
$$
E = 4\pi Ql
$$
となります。また、この位置にある荷電粒子\(e\)のクーロンポテンシャルはこれを\(l\)方向に積分して
$$
\begin{eqnarray}
V &=& \int_0^{l} eE dl\\
&=& \frac{4\pi eQl^2}{2}
\end{eqnarray}
$$
となります。
デバイ長
次にプラズマ中の荷電粒子の熱エネルギーについて考えます。
これはボルツマン定数\(k_B\),プラズマの温度\(T\)を使って
$$
\frac{1}{2}k_BT
$$
と書くことができます。
さて、プラズマ中の荷電粒子はクーロン力に縛られることなく動き回ることができる、と仮定すると先ほどのクーロンポテンシャルと熱エネルギーの関係は
$$
\frac{4\pi eQl^2}{2} \leq \frac{1}{2}k_BT
$$
となり、長さ\(l\)について解くと
$$
l \leq \sqrt{\frac{k_B T}{4\pi n e^2}}
$$
よって、この等号が成り立つ長さを
$$
\lambda_D = \sqrt{\frac{k_B T}{4\pi n e^2}}
$$
とします。
これをデバイ長といいます。この長さよりも小さいスケールでは荷電粒子はクーロン力につかまり電磁気力の影響をモロに受けることになります。
プラズマ周波数
デバイ長を熱速度(熱運動する際の速度)で割った値を求めてみましょう。
熱速度\(v\)は
$$
\frac{1}{2}mv^2 = \frac{1}{2}k_BT
$$
で与えられ、
$$
v = \sqrt{\frac{k_BT}{m}}
$$
となります。
よって、これでデバイ長を割ると
$$
\tau_e = \frac{\lambda_D}{v} = \sqrt{\frac{m}{4\pi n e^2}}
$$
という時間の単位の値が出てきます。(時間=道のり÷速さ)
この\(\tau_e\)よりも長い時間スケールでデバイ長よりも大きな空間スケールでは荷電粒子の運動は電場の影響を受けることがない、ということが分かります。
\(\tau_e\)の逆数をプラズマ周波数\(\omega_p\)といいます。
参考
こちらの本を参考にしました。
コメント
[…] 前回「【磁気流体】デバイ長を導出してみた!!」でデバイ長について解説しました。 […]