今回は複素関数の無限積分を解いていきたいと思います。
流れとしては
- 特異点を見つける
- 留数を求める
- ジョルダン曲線を分解してそれぞれの値を求める
という感じですね。文字で説明するとわかりにくいですね。
ではさっそくやっていきましょう。
解く問題
以下の無限積分について考える。
$$\int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{x^2+1}$$
計算
特異点を見つける
まず特異点を見つけましょう。
$$f(z) = \frac{1}{z^2+1}$$
を因数分解すると、$$f(z) = \frac{1}{(z+i)(z-i)}$$
となります。よって、\(z=\pm i\)が特異点になります。
留数定理

このような半径が\(r\)である半円上の積分路\(Cr\)と\(-r < x < r \)の線分からなるジョルダン曲線\(C\)(半円部分+直線部分)を考えます。
このときジョルダン曲線\(C\)の中に特異点が一つだけあるので(\(z=i\))留数定理を使って
$$ \begin{eqnarray} \int_C f(z) dz &=& 2\pi i Res(z=i) \\ &=& 2\pi i \lim_{z \to i} \frac{1}{(z+i)} \\ &=& 2\pi i \frac{1}{2i} \\ &=& \pi \end{eqnarray} $$
となります。
これで ジョルダン曲線\(C\) (半円部分+直線部分)の線積分が求まりました。
ジョルダン曲線Cを分解してそれぞれ計算
いま、すべての線積分が求まったのでこれを直線部分と半円部分(\(C_r\))に分けて考えます。つまり、
$$ \int_C f(z) dz= \underbrace{\int_{C_r} f(z) dz}_{(半円部分)} + \underbrace{\int_{-r}^{r} f(z) dz }_{(直線部分)} $$
となります。
半円部分
半円部分の絶対値を評価すると、
$$\left|\int_{C_r}f(z) dz\right| \leq \int_{C_r} \frac{|dz|}{|z^2 + 1|}$$
ここで、\(z = re^{i\theta}\)とすると、$$|z^2 + 1| = |r^2 e^{2i\theta} +1| \geq |-r^2 + 1| = r^2 – 1 $$
また、\(dz = ire^{i\theta} d\theta \)より、\(|dz| = r|d\theta|なので\) $$\int _{C_r} r|d\theta| = \int_0^\pi r|d\theta| = r\pi$$
となるので、
$$\left|\int_{C_r}f(z) dz\right| \leq \int_{C_r} \frac{|dz|}{|z^2 + 1|} \leq \frac{\pi r}{r^2-1}$$ となります。
よって半円部分の線積分は\(r \to \infty\)のとき、$$\lim_{r\to\infty}\int_{C_r}f(z) dz = 0$$
直線部分
また、直線部分は\(r \to \infty\)のとき、$$\int_{-r}^{r} f(z) dz = \int_{-\infty}^{\infty} f(z) dz = \int_{-\infty}^{\infty} \frac{1}{z^2+1} dz $$
仕上げ
よって $$ \begin{eqnarray} \int_C f(z) dz &=& \int_{C_r} f(z) dz+\int_{-r}^{r} f(z) dz \\ \pi &=& 0 + \int_{-\infty}^{\infty} \frac{1}{z^2+1} dz \end{eqnarray} $$
であるから、 $$ \int_{-\infty}^{\infty} \frac{1}{x^2+1} dx = \pi $$ となります。
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