今回はボソンとフェルミオンの固有状態、固有関数について解説していきたいと思います。
粒子は区別がつけられないという性質から、二粒子に対する波動関数は
$$
\psi_{nm}(r_1,r_2) = \frac{1}{\sqrt{2}}(\phi_n(r_1)\phi_m(r_2) \pm \phi_m(r_1)\phi_n(r_2))\tag{1}
$$
を満たすことが分かります。(+がボソン、-がフェルミオンに対応、n,mは 個々の粒子のエネルギー準位 )
このことを使って一次元の井戸型ポテンシャルでのボソンやフェルミオンの振る舞いを見てみましょう。
一次元井戸型ポテンシャルにおけるボソンやフェルミオンの振る舞い
ボソンが二粒子ある場合
ボソンが二粒子ある場合を考えます。
今、一次元の井戸型ポテンシャルを考えているので個々の粒子の固有状態は
$$
\phi_n = \sqrt{\frac{2}{L}}\sin\left(\frac{n\pi}{L}\right)x (n=1,2,\cdots)
$$
また、固有エネルギーは
$$
E_n = \frac{n^2\pi^2\hbar^2}{2mL^2} (n=1,2,\cdots)
$$
となります。(井戸の幅はLとしました。)
このことを念頭に話を進めていきます。
基底状態
基底状態のとき、エネルギー準位は\(n=m=1\)となるので
二つの粒子の固有状態は(1)式から
\begin{eqnarray}
\psi_{11} &=& \frac{1}{\sqrt{2}} (\phi_1(r_1)\phi_1(r_2) + \phi_1(r_1)\phi_1(r_2))\\
&=& \sqrt{2}\phi_1(r_1)\phi_1(r_2) \tag{2}
\end{eqnarray}
となります。
さらに固有エネルギーは
$$
E_{11} = E_1+E_1 = 2E_1\tag{3}
$$
となります。
(ここで
$$
\phi_1 = \sqrt{\frac{2}{L}}\sin\left(\frac{\pi}{L}\right)x
$$
$$
E_1 = \frac{\pi^2\hbar^2}{2mL^2}
$$
となっています。)
また状態数(同じ固有エネルギーで縮退している固有状態の数)は(2)の固有状態しか存在しないので1となっています。
第一励起状態
第一励起状態のとき、エネルギー準位は\(n=1,m=2\)または\(n=2,m=1\)なので
二つの粒子の固有状態は(1)式から
\begin{eqnarray}
\psi_{12} = \frac{1}{\sqrt{2}} (\phi_1(r_1)\phi_2(r_2) + \phi_2(r_1)\phi_1(r_2))
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
\psi_{21} = \frac{1}{\sqrt{2}} (\phi_2(r_1)\phi_1(r_2) + \phi_1(r_1)\phi_2(r_2))
\end{eqnarray}
の二つになります。
しかし、これらは
$$
\psi_{12} = \psi_{21}\tag{4}
$$
と、同じ固有状態を示しています。
これはボソンの条件
$$
\psi(r_1,r_2) = +\psi(r_2,r_1)
$$
にあたります。(対称性)
さらに固有エネルギーは
$$
E_{12} = E_{21} = E_1+E_2
$$
となります。
(4)式から、同じエネルギーに同じ固有状態は一つしかないため、状態数は1となります。
フェルミオンが二粒子ある場合
フェルミオンが二粒子ある場合を考えます。
同じ井戸型ポテンシャルなので、個々の粒子の固有状態や固有エネルギーは同じものになります。
ボソンと違う点はフェルミオンは「二つの粒子は同じエネルギー準位を取れない」という点です。( パウリの排他律 )
つまり、\(n=m=1\)というような状態の取り方ができません。
基底状態
基底状態のとき、エネルギー準位は\(n=1,m=2\)または\(n=2,m=1\)なので
二つの粒子の固有状態は(1)式から
\begin{eqnarray}
\psi_{12} = \frac{1}{\sqrt{2}} (\phi_1(r_1)\phi_2(r_2) – \phi_2(r_1)\phi_1(r_2))
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
\psi_{21} = \frac{1}{\sqrt{2}} (\phi_2(r_1)\phi_1(r_2) – \phi_1(r_1)\phi_2(r_2))
\end{eqnarray}
となります。
これらはフェルミオンの条件
$$
\psi(r_1,r_2) = -\psi(r_2,r_1)\tag{5}
$$
を満たしているので同じ固有状態を示しています。(反対称性)
さらに固有エネルギーは
$$
E_{12} = E_{21} = E_1+E_2
$$
となります。
また状態数は(5)の条件から、一つの固有状態しか存在しないので1となっています。
第一励起状態
第一励起状態のとき、エネルギー準位は\(n=1,m=3\)または\(n=3,m=1\)なので
二つの粒子の固有状態は(1)式から
\begin{eqnarray}
\psi_{13} = \frac{1}{\sqrt{2}} (\phi_1(r_1)\phi_3(r_2) – \phi_3(r_1)\phi_1(r_2))
\end{eqnarray}
\begin{eqnarray}
\psi_{31} = \frac{1}{\sqrt{2}} (\phi_3(r_1)\phi_1(r_2) – \phi_1(r_1)\phi_3(r_2))
\end{eqnarray}
となります。
これらもフェルミオンの条件
$$
\psi(r_1,r_3) = -\psi(r_3,r_1)\tag{6}
$$
を満たしているので同じ固有状態を示しています。
さらに固有エネルギーは
$$
E_{13} = E_{31} = E_1+E_3
$$
となります。
また状態数は(6)の条件から、一つの固有状態しか存在しないので1となっています。
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