【量子力学】ボース・アインシュタイン凝縮について解説してみた!!

物理

今回は「ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)」について解説したいと思います。

ボース・アインシュタイン凝縮とは、ボース粒子の基底状態のところに多くの粒子が存在している状態のことです。

この現象が起きる条件などを調べていきたいと思います。

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ボース・アインシュタイン凝縮が起きる条件

二次元の調和振動子

今回はBECを起こす例として、二次元の調和振動子を考えます。

このハミルトニアンは

$$
{\hat H} = \frac{1}{2}( {\hat p_x}^2+{\hat p_y}^2 ) + \frac{1}{2}\omega^2(x^2 + y^2)
$$

と書けます。

またこのハミルトニアンの固有値は

$$
\epsilon = \omega(n_x + n_y +1) \tag{1}
$$

と書けます。

これはよく(量子力学の)教科書に載っているので調べてみてください。

粒子数を表したい

ボースアインシュタイン凝縮は「絶対零度付近で粒子が最低エネルギーに集まる」という現象なので、「温度によって最低エネルギーにどれくらい粒子が存在するのか」を知ることができたら便利です。

なので、系の粒子数をまず知っておきたいところです。

オイラーの和公式

ボース・アインシュタイン凝縮というくらいなので、ボース粒子を使います。

その粒子数は

$$
N = \sum_{n_x}\sum_{n_y}\frac{1}{\exp(\beta(\epsilon – \mu)) – 1}
$$

と「ボース分布関数」の和によってあらわされます。

しかし、残念ながらこのままでは計算ができないので

さらに「オイラーの和公式」(和を積分に近似する方法)を使って粒子数を表すと

\begin{eqnarray}
N &=& \sum_{n_x}\sum_{n_y}\frac{1}{\exp(\beta(\epsilon – \mu)) – 1} \\
&\sim & \underbrace{\int_{0}^{\infty}d\chi \int_{0}^{\infty}d \eta \frac{1}{\exp(\beta (\omega(\chi + \eta + 1) – \mu)) – 1}}_{=N’} \tag{2}
\end{eqnarray}

ただし、(1)式において

$$
\begin{cases}
n_x = \chi\\
n_y = \eta
\end{cases}
$$

としました。

\(N’\)の最大値

では試しに\(N’\)は最大でどれだけの大きさを取るのかを計算してみましょう。

粒子数はマイナスにならないための条件

さらに粒子数は負の数にならないので

$$
(N’ =) \int_{0}^{\infty}d\chi \int_{0}^{\infty}d \eta \frac{1}{\exp(\beta (\omega(\chi + \eta + 1) – \mu)) – 1} \geq 0
$$

つまり、分母が

$$
\exp(\beta (\underbrace{\omega(\chi + \eta + 1)} _{\epsilon} ) – \mu) – 1 \geq 0
$$

なので両辺の対数を取ると

$$
\epsilon \geq \mu\tag{3}
$$

となることが分かります。

これは常に成り立っていなくてはいけません。

なので\(\epsilon\)の最低値つまり\(\epsilon_0 = \omega(0 + 0 + 1) = \omega\)のときでも

$$
\epsilon \geq \omega(=\epsilon_0) \geq \mu \tag{4}
$$

が成り立っていれば、すべての\(\epsilon\)に対して(3)式が成り立っている、つまり、 粒子数がマイナスになっていないといえます。

この条件が満たされるとき(粒子数がマイナスになっていないとき)\(\mu\)の最大値は\(\omega\)だということが分かります。

\(N’\)の最大値を見積もる

では\(N’\)の最大値\(N’_{max}\)を考えてみましょう。

\(N’\)は\(\mu\)の増加関数になっています。(微分するとわかります。)

すなわち\(\mu\)が大きくなるほど\(N’\)も大きくなります。

なので\(\mu\)の最大値である\(\omega\)のとき、\(N’\)は最大になります。

このときの値を計算すると

\begin{eqnarray}
N’_{max} &=& \int_{0}^{\infty}d\chi \int_{0}^{\infty}d \eta \frac{1}{\exp(\beta (\omega(\chi + \eta + 1) – \omega)) – 1} \\
&=& \int_{0}^{\infty}d\chi \int_{0}^{\infty}d \eta \frac{1}{\exp(\beta \omega(\chi + \eta )) – 1} \\
&=& \frac{\pi^2}{6\omega^2 \beta^2}\\
&=& \frac{T^2\pi^2}{6\omega^2 } (k_B = 1の単位系を使った)\tag{5}
\end{eqnarray}

となります。(最後から二番目の計算はη関数を使う)

グラフで確認

(5)式は\(T\)の二次関数となっています。

(5)式と、全体の粒子数\(N\)(粒子数はそれなりに多い)を横軸\(T\)縦軸\(N\)のグラフとして書くと

というようになります。

これは少しおかしいグラフです。

なぜなら、 \(T < T_c\)の領域では \(N > N’_{max} > N’\)なので \(N = N’\)となるように\(N’\)を取ることができません。

どこがおかしかったのか

どこがおかしかったのでしょうか。

それは「オイラーの和公式」で和を積分に変えたところです。

この近似によって、\(N’_{max}\)によってがカバーできていないエネルギー準位が生まれたのではないかということが考えられます。

それはどこでしょうか。

寄与していないエネルギー準位

\(\mu\)はたかだか\(\omega\)(基底状態)までしか取れません。

$$
N = \sum_{n_x}\sum_{n_y}\frac{1}{\exp(\beta(\epsilon – \mu)) – 1}
$$

に戻って考えると、\((\epsilon_0 = )\omega = \mu\)で\(\sim O(N)\)と考えられます。

一方、\(T < T_c\)において、\(N’,N’_{max}\)のオーダーはそこまで大きくありません。

これは先ほどのグラフからも読み取れます。

よって、\(T < T_c\)では、基底状態付近に存在する粒子の個数が省略されてしまっていると考えられます。

つまり、\(N’_{max}\)によってカバーできていないエネルギー準位は基底状態付近だということが言えます。

まとめると、「基底状態付近のエネルギー準位にある粒子数は\(N’_{max}\)によってあらわされていない」→「\(N – N’_{max} \)の数の粒子がすべて基底状態付近に存在している」となります。

このように基底状態に多くの(\(N – N’_{max}\)個程度)の粒子が集まる現象を「ボースアインシュタイン凝縮」といいます。

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